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オタクSEの日常のノウハウやチラ裏

【書面例あり】退去後に揉めることなく敷金を全額返金させた方法

原状回復費用、敷金返還、いつの時代も揉めるワードですね。
今年の民法改正によるルールの明確化でだいぶ借主有利になってきているのですが、まだまだぼったくり請求を行う不動産屋を多く聞くのが現状です。

invest.re-ism.co.jp

自分は今まで賃貸物件の退去を3回経験しています。

過去の2件は、最終的には妥当な金額になったのですが、最初にふっかけてくるため交渉にエネルギーを使い、非常に疲れました。

しかし、直近の引っ越しで自分なりに調べて試行錯誤した結果、初めて揉めることなく、原状回復費用ゼロ&退去から1週間以内に全額敷金返金を勝ち取ったのです!

既に知り合いには手口を公開し、1人から良い結果を聞いたので、再現性はあると思います。
悪徳不動産業者に不当に泣かされる弱者が減るよう、ここに公開します。

※なお、自分は法律の専門家ではないため、情報の活用は自己責任でお願いします。

結論編:具体的に何をすれば良いのか?

まず、この手順は退去の1ヶ月以上前から余裕を持って行う点に注意してください。

いきなり丸投げですが、下記の動画を見ましょう。退去費用の考え方をここまで詳しく解説している方を他に知りません。

www.youtube.com

自分の手順は、この方の考え方を応用した「スムーズに揉めることなく妥当な金額に落ち着かせる」具体的な方法論です。

動画の内容を理解したら、以下の手順を踏んでください。

ポイントは、「許せる程度には綺麗に使ってくれて、法律を知っていて揉めると面倒くさそうな借主」アピールを「退去前から」「記録に残る形で」しておくことです。

  1. 賃貸借契約書を読み込み、不利な特約がないか確認する
    • 不利な特約がある場合は、専門家に相談するか判例を確認し、無効か有効か交渉できるかを調べておく
  2. 下記の要素を記載した解約予告通知書*1を作成する。(書面の例を下に貼り付けておきます)
    • 立ち会いは行わず、鍵は郵送とすること
    • 自分の想定の原状回復費用と法律根拠
    • 費用がかかる場合は、写真を含む請求根拠、詳細な見積もりを送ること
    • 今後のやり取りはメールにしてほしいこと
  3. 期限までに解約予告通知書を配達記録で管理会社・オーナーにそれぞれ郵送する。
  4. 退去までの間に以下のことをしておく。
    • 念入りに掃除しておく。*2
    • 自分の過失で壊してしまった箇所は火災保険を使って修理する。(※重要)
    • 部屋の隅々まで写真を撮っておく。
  5. 退去日に、鍵と下記の書面を管理会社へ簡易書留で郵送する(書面の例を下に貼り付けておきます)
    • 最終的にこちら側で認識している傷・不備一覧
    • 退去費用をナシにできる自信がある場合 → 〜の根拠で、原状回復費用はないので、速やかに敷金を返してくれという文面
    • 払わざるを得ない特約や誤魔化せない過失がある場合 → 速やかに写真を含む詳細な見積もりを送ってくれという文面
  6. 返金されたら勝利、されなかったらメールで請求・交渉する
  7. 最悪揉めたら内容証明郵便や少額訴訟に移行する。
    • 大手管理会社の場合はオーナーおよび本社を巻き込むと効果的です。


以上が手順ですが、面倒くさいですよね?

ただ、経験上、ここまでやらないとふっかけられたり、揉めた挙句返金時期を遅らされ、更なるエネルギーを消費する可能性が高まります。
残念ですが、悪習が残っている以上は、一番早く返金させる方法がこれだと思います。


書面の例: 解約予告通知書、鍵送付の添え状

以下のような書面を送ると効果的です。
なお、原状回復費用の詳細、特約関連の箇所は自分なりにアレンジしてください。

解約予告通知書
鍵の送付状

解説編:手順の根拠

以下は手順の(個人的な)根拠です。
読まなくても支障はないですが、決して安くない金額を守るために考え方を知っておくのは悪くないと思います。

重要な考え方①:賃貸借契約書を読み込み、法律や判例と照らし合わせて自分なりの落とし所を作る

これは当然ですね。契約書が全ての向こうの請求根拠になるので、隅々まで読むべきです。
ここで注意すべきは、判例に照らしてあまりに借主に不利な特約は無効になる可能性が高いことで、聞けるなら専門家に聞いたほうがいいです。

よくあるクリーニング特約は費用が明記されていれば有効なことが多いようです。

自分は今回、費用が明記されていない「退去時のクリーニング費用は入居者負担」の文言だけだったので、「自分持ちで充分クリーニングする。退去後に請求するなら根拠と詳細な見積もりをよこせ。相場と比べて協議する。」というロジックで牽制しました。*3
結果、相手が面倒がったのか綺麗さに満足したのか、請求されずに敷金満額返ってくることになりました。

もし書面を送りつけていなかったら、黙って30000円以上引かれていたことでしょう。

重要な考え方②:事前に牽制し、揉めると面倒くさいやつだと思わせておく

まず、管理会社の担当者も勤め人なので、一度請求すると、それが不適切でも体面上・心理的に簡単に取り下げられないという問題があります。
なので、相手の顔を立てつつ、請求根拠を事前に潰しておくのが重要です。

ついでに、こういう書面を事前に送ってくる個人はあまりいないので、揉めるのめんどいからとグレーゾーンな傷を見逃してくれる可能性も高まります。

重要な考え方③:記録に残る形で全てやり取りする。立会はしない。

よく言われますが、管理会社のお客様は我々ではなくオーナーです。
退去して縁が切れる入居者はもはやステークホルダーですらないので、記録に残らない電話で一度なんか言われたところで、頑張る理由がありません。

全て配達記録*4の残る書面かメールでやりとりしましょう。
揉めた際は管理会社に握り潰されないよう、本社やオーナーを巻き込むとより良いです。

揉める前であれば、法的に重要な解約予告通知書に追記することで、管理会社の顔を潰さずオーナーを巻き込む良い口実になります。

また、立ち会いをするか否かは意見が分かれると思いますが、法的に立ち会い義務はありません。
傷などの申し送り事項は書面で送ったほうが絶対いいです。

海千山千のリフォーム担当が来て、強引にサインさせてくる事例も聞き、危険です。
また、自分がその場でいくら「ここは経年劣化で〜」と主張しても、担当者が忘れていたり、リフォームや見積作成担当との情報連携ができておらず、後日請求されたこともありました。

オーナーさんが良い方で挨拶をしたい場合でも、立ち会いと別の機会を設けたほうがいいでしょう。



まとめ

事前に書面を送って牽制し、立ち会いを省略することで、揉めたり原状回復費用をぼったくられることなく敷金を取り返せる可能性が高いことを述べました。

もちろんこんなことやらなくて済むならそれが一番良いですが、情報の非対称性を利用してお金を奪う手口が減らない以上、書く必要があると考えました。

取り扱い方法に注意して、円満な退去を成功させてほしいと思います。


おまけ:悪いやり方

以下は1つの思いつきですが、実行しないでください。訴訟されても知りません。

管理会社が、退去して縁が切れる入居者を得させたり、時間を使いたくないことは既に述べました。
ということは、敷金を向こうが預かっている場合、いくら上記のような行為をして法的根拠を主張しても、面倒臭がってすぐに返還してくれないこともあるのです。

イメージ

実際、家賃の滞納はすぐに督促するくせに、敷金の返還には数ヶ月とかよく聞く話です。

これは、向こうがお金を預かっているため、パワーバランス的に向こうが強者だからですね。

じゃあどうすれば強者になれるのか?
家賃を払わなければ良いのです。

解約予告通知書に「最終月の家賃は、退去完了後にお支払い致します。」とでも書いておいて、のらりくらり退去まで過ごし、退去完了後に「返還分の敷金で相殺しておいてください」としておけばどうでしょう?
あまりに原状回復費用がかかる場合を除き、手間とコストを考えて、向こうが折れてくれる可能性も高いのではないでしょうか?

数ヶ月滞納したら訴訟される可能性は高いですが、退去する約束をした上での1ヶ月分の家賃滞納は、訴訟リスクを抑えつつパワーバランスを変化させる可能性を秘めた麻薬かもしれません。

と、叩かれそうな思いつきを残して筆を置くことにします。

*1:管理会社で様式が決まっている場合がありますが、その場合は別書類として同封すると良いでしょう

*2:お金をかけずできる範囲で良いですが、残りの汚れを経年変化と言い張れるくらいまではやっておきましょう

*3:なお、こういう議論を契約終了時にする事自体が面倒なので、入居時に「クリーニング特約外してくれ」という交渉をするのが一番の理想ですね。

*4:内容証明は最初から使うには過剰すぎるので、揉めるまでは使わなくて良いと思います